「広告費をかけても新患が増えない」「問い合わせは来るのに初診予約につながらない」と悩むクリニックは少なくありません。新患獲得では、広告を増やす前に、患者さんが見つける・比較する・予約するまでの流れを整えることが重要です。
この記事では、初診患者を増やすための集患施策を、費用対効果を確認しながら進める方法として整理します。なお、再診率向上は、来院した患者さんに継続受診してもらうための施策です。本記事で扱う新患獲得は、まだ来院していない見込み患者さんを初診予約へつなげる施策に絞ります。
新患獲得で最初に確認したいこと
新患数だけを追うと、広告費だけが増え、採算が合わない状態になりがちです。まずは、次の数字や項目を月ごとに把握しましょう。
| 指標 | 確認する内容 |
|---|---|
| 初診予約数 | Web・電話・紹介などで入った初診予約の件数 |
| 新患数 | 初診として実際に来院した人数 |
| 予約完了率 | 問い合わせやサイト閲覧のうち予約に至った割合 |
| 来院率 | 予約者のうち実際に来院した割合 |
| 新患獲得単価 | 広告費や制作費を、新患数で割った金額 |
| 流入経路 | Google検索・Googleマップ・紹介・看板・SNSなど |
特に重要なのは、問い合わせ件数ではなく実来院した新患数で判断することです。予約時に「何を見て当院を知りましたか」と確認し、受付で記録するだけでも、効果の見え方が変わります。
1. 狙う患者像と診療メニューを絞る
「地域のすべての患者さん」を対象にすると、サイト、広告、院内案内の訴求がぼやけます。新患獲得では、まず優先順位を決めることが大切です。
- 伸ばしたい診療科・診療メニューは何か
- どのような悩みを持つ患者さんに来てほしいか
- 患者さんはどの地域から通院しやすいか
- 受診前に不安になりやすい点は何か
たとえば、平日夕方の予約枠に余裕がある場合は、仕事帰りに受診しやすい層に向けて、診療時間、アクセス、当日予約の可否を分かりやすく伝える方法が考えられます。これは再診を促す施策ではなく、受診前の不安を減らして初診の意思決定を後押しする施策です。
2. Google検索・Googleマップで「見つかる状態」をつくる
地域のクリニックを探す患者さんは、「地域名+診療科」「症状+近くの病院」などで検索することが一般的です。そのため、Google検索とGoogleマップで、所在地・診療時間・電話番号・休診日などの基本情報が正しく表示される状態を整えます。
Google ビジネス プロフィールでは、診療時間、臨時休診、所在地、電話番号、公式サイトへのリンクなどを定期的に見直しましょう。情報が古いと、受診意欲のある患者さんを取りこぼすおそれがあります。
公式サイト側でも、診療科ごとのページに、対象となる悩み、受診の目安、診療の流れ、費用の考え方、アクセス方法を掲載します。所在地や営業時間などの情報を構造化データで検索エンジンに伝えることも、情報の理解を補助する手段の一つです。ただし、構造化データを実装しただけで検索順位や表示が保証されるわけではありません。

3. 初診用ページは「安心して予約できる情報」を優先する
特に初診患者さんは、医療内容そのものだけでなく、「自分が受診してよいのか」「何を持参すればよいのか」「費用はいくら程度か」といった不安を抱えています。診療科の紹介だけで終わらせず、初診向けの情報を一か所に集約しましょう。
初診ページに載せたい項目
- どのような症状・相談に対応しているか
- 初診時の予約の要否、当日受診の可否
- 受付から会計までのおおまかな流れ
- 持ち物、保険証・医療証などの案内
- 保険診療・自由診療の区分と費用に関する説明
- 診療時間、休診日、駐車場・駅からの道順
- 電話、Web予約、問い合わせの導線
スマートフォンで読む患者さんを想定し、長い説明文よりも、見出し、箇条書き、予約ボタンを活用すると分かりやすくなります。予約導線は各ページの最後だけでなく、ページ上部や診療内容の説明直後にも用意するとよいでしょう。
4. 予約しやすさを改善して取りこぼしを減らす
新患獲得では、集客施策より先に予約時の障壁を下げることが有効な場合があります。せっかく検索や広告で関心を持っても、電話がつながらない、予約方法が分からない、空き状況が見えないと離脱につながります。
- 診療時間外でも使えるWeb予約を用意する
- 初診と再診で予約メニューを分ける
- 症状や受診目的を選びやすくする
- 予約完了後に持ち物や来院時刻を案内する
- 電話受付の混雑時間を把握し、案内文を改善する
ただし、予約項目を増やしすぎると途中離脱を招くことがあります。最初は、氏名、連絡先、希望日時、簡単な受診目的など、受付に必要な項目に絞ると運用しやすくなります。
5. 広告は小さく始め、診療メニュー別に検証する
検索広告や地域向けの広告は、受診意欲が高い層に情報を届けられる可能性があります。一方で、診療科や地域、競合状況によって費用は大きく変わります。最初から大きな予算を投じるのではなく、診療メニューや地域を限定し、小規模に検証することが重要です。
広告では、クリック数だけで成否を決めず、予約数、実来院数、新患獲得単価まで確認します。たとえば、クリック数が少なくても来院率が高ければ、優先する価値があります。反対に、問い合わせが多くても予約や来院につながらなければ、広告文、案内ページ、予約方法の見直しが必要です。
医療機関の広告にはルールがあります。比較して優れていると受け取られる表現、根拠のない最上級表現、治療効果を誤認させる表現などは避け、医療広告ガイドラインを確認したうえで運用してください。
6. 地域連携と紹介導線を整える
新患の流入は、Webだけではありません。近隣の医療機関、薬局、介護・福祉事業者、企業、学校などとの接点が、地域によっては有力な入口になります。
紹介を増やす目的は、単に紹介件数を増やすことではありません。どのような患者さんを受け入れやすいか、予約方法はどうか、検査や診療後の連携はどうなるかを、関係先に明確に伝えることが大切です。
- 紹介を受けたい症状や対象患者を整理する
- 紹介元向けに受付方法と連絡先を明確にする
- 診療可能な曜日・時間帯を共有する
- 必要に応じて紹介後の報告フローを整える

新患獲得と再診率向上は分けて設計する
新患獲得と再診率向上は関連しますが、見るべき数字と改善箇所が異なります。
| 項目 | 新患獲得 | 再診率向上 |
|---|---|---|
| 対象 | まだ来院していない見込み患者さん | すでに来院した患者さん |
| 主な目的 | 初診予約・初回来院を増やす | 必要な継続受診につなげる |
| 主な改善場所 | 検索、マップ、サイト、広告、予約導線、地域連携 | 診療後の説明、次回予約、リマインド、接遇、待ち時間 |
| 主な指標 | 新患数、予約化率、来院率、新患獲得単価 | 再診率、次回予約率、離脱率、継続期間 |
新患が少ない課題に対して、再診施策だけを強化しても、初診の入口は増えません。反対に、新患獲得だけを増やしても、受け入れ体制が整っていなければ現場負担が高まります。まずは目的ごとに施策と指標を分け、順番に改善することが重要です。
まとめ
クリニックの新患獲得では、広告費を増やすことよりも、患者さんが見つけ、安心し、迷わず予約できる流れを整えることが基本です。
- 新患数、流入経路、新患獲得単価を記録する
- 優先する患者像と診療メニューを明確にする
- Googleマップ、公式サイト、初診ページの情報を最新に保つ
- Web予約や電話対応を見直し、予約時の離脱を減らす
- 広告は少額から検証し、実来院ベースで判断する
- 医療広告のルールを確認し、表現を適正化する
最初の一歩として、直近1か月の新患を流入経路別に集計し、最も多い経路と最も費用がかかっている経路を比べてみてください。その結果をもとに、情報整備、予約導線、広告のいずれを優先するか決めると、改善を進めやすくなります。

参考資料
- 厚生労働省:医療広告ガイドライン(医療広告で注意すべき表現や考え方の確認)
- Google 検索セントラル:Google にビジネスに関する情報を提供する(Google検索・Googleマップ上の事業者情報に関する案内)
- Google 検索セントラル:ローカル ビジネス(LocalBusiness)の構造化データ(所在地や営業時間などを検索エンジンへ伝える方法)

