クリニックのSNSは、診療時間の案内や院内の雰囲気、健康情報の発信に役立つ一方で、表現を誤ると医療広告規制に抵触するおそれがあります。特に自由診療、症例写真、口コミ、キャンペーンを扱う投稿は注意が必要です。
結論として、SNSを「気軽な広報」と考えず、プロフィール・投稿本文・画像・ハッシュタグ・返信を含めて広告として確認することが大切です。厚生労働省の事例解説書では、SNSでも情報を一体的かつ分かりやすく示す考え方が示されています。
まず押さえたい:SNSも医療広告規制の対象です
医療機関の公式アカウントで、受診や施術へ誘導する目的を持って発信する情報は、SNSであっても医療広告規制の対象になり得ます。短い投稿、画像だけの投稿、プロフィール欄、固定投稿、コメントへの公式返信なども、個別ではなく一連の表示として確認する必要があります。
「文字数が少ないから詳細はホームページに載せればよい」「ストーリーズなら問題になりにくい」といった考え方は危険です。媒体の形式ではなく、表示全体が患者にどのような印象を与え、受診や施術の選択にどう影響するかが重要です。
クリニックのSNSでよくある失敗例
1. 「必ず治る」「絶対安全」など、結果を保証する
「必ず成功します」「絶対に安全です」「誰でも1回で効果を実感できます」といった表現は避けるべきです。治療結果には個人差があり、医学上あり得ない断定や、結果を過度に期待させる表現は、虚偽広告または誇大広告と判断されるおそれがあります。
また、「業界No.1」「地域で一番」「最高の技術」「日本一の症例数」など、優良性を強く印象づける最上級表現や比較表現も注意が必要です。事実であると考えていても、広告表現として認められない場合があります。
- 避けたい例:絶対安全、必ず成功、最も効果的、地域No.1
- 見直しの方向:提供する診療内容、検査・診療の流れ、対象となる症状などを、事実に基づいて説明します。
2. 自由診療を「価格」と「メリット」だけで紹介する
自由診療の投稿で、「今だけ9,800円から」「短期間で理想の自分へ」「ダウンタイムほぼなし」といった訴求だけを行うのは、代表的な失敗例です。自由診療に関する情報を発信する場合は、広告可能事項の限定解除の要件を満たすことが必要になるケースがあります。
少なくとも、投稿・プロフィール・返信などの一連の表示で、患者が確認しやすい形で次の情報を示せるかを確認します。
- 治療・施術の内容
- 通常必要とされる治療期間・回数
- 標準的な費用の範囲、別途費用や内訳
- 主なリスク・副作用
- 問い合わせ先
最低料金だけを大きく見せ、実際に必要となる費用や条件を小さく書く方法も問題になり得ます。キャンペーン価格を載せる場合も、適用条件、対象範囲、通常必要となる費用を分かりやすく確認できるようにします。
3. 「詳細はリンク先へ」で必要情報を投稿から切り離す
自由診療の内容や症例写真を掲載しながら、「費用・リスクは公式サイトへ」とだけ案内する運用は注意が必要です。SNSでは、別リンク先に情報があるだけでは不十分とされる事例があります。
特に、治療内容・費用・回数や期間・主なリスクや副作用は、投稿単体ではなくても、プロフィール、投稿、返信などを通じて一体的かつ一覧性をもって確認できる構成にすることが重要です。リンク先に誘導する場合も、SNS上での説明を省略しないようにします。
4. ビフォーアフター写真だけを載せる
施術前後の写真は視覚的に伝わりやすい反面、患者に治療効果を誤認させるおそれがあるため、慎重な対応が必要です。写真のみ、または「きれいになりました」「痛みなく理想の仕上がり」といった説明だけの投稿は避けます。
掲載を検討する場合は、写真の近くで、通常必要とされる治療内容、費用、主なリスク・副作用などの詳細な情報を分かりやすく示します。リンク先だけに必要事項を置いたり、メリットに比べて極端に小さな文字でリスクを表示したりする方法は適切ではありません。
さらに、画像の加工・修正、撮影条件の違い、実際には行っていない施術のイメージ画像を症例のように見せる行為は、虚偽または誇大と扱われるおそれがあります。
5. 患者の口コミ・体験談を転載、編集して紹介する
「患者様から喜びの声をいただきました」「Googleの口コミで高評価です」として、治療の効果に関する感想やアンケートを公式SNSに転載する運用は注意が必要です。患者の主観に基づく治療体験談は、広告として掲載できない事項に該当します。
とくに、好意的な口コミだけを選んで掲載する、文章を短く編集して効果を強調する、スタッフが患者の感想のように投稿する、といった行為はリスクが高いといえます。
なお、患者本人が自主的にSNSや口コミサイトへ投稿した内容は、医療機関が掲載を依頼したり、対価・便宜を提供したりしていない場合、直ちに医療広告とは限りません。ただし、クリニック側が公式アカウントで再投稿・転載・強調する場合は別問題です。
6. 関係のないハッシュタグで集客する
投稿内容と関係のない病名、治療名、流行語などのハッシュタグを付けて閲覧を集める方法は避けます。厚生労働省のSNS事例でも、投稿と関係のないハッシュタグは使用しないよう示されています。
ハッシュタグは単なる補助情報ではなく、患者を投稿へ誘導する表示の一部です。診療内容と無関係なタグ、過度に不安をあおるタグ、優良性を印象づけるタグの使用は控えます。
7. 医師・スタッフの個人アカウントをノーチェックにする
個人アカウントであっても、クリニックや医師が特定され、受診・施術への誘引性がある投稿は、広告規制との関係を確認する必要があります。公式サイトや公式アカウントから個人アカウントへリンクしている場合、勤務先の診療内容、症例、価格、キャンペーンを発信している場合は、特に慎重な確認が必要です。
「個人の感想です」「個人アカウントなので自由に投稿できる」とは限りません。院長、勤務医、カウンセラー、SNS担当者を含め、投稿ルールを共有しておくことが大切です。

投稿前に確認したいチェックリスト
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 治療効果 | 「必ず」「絶対」「誰でも」など、結果を保証・断定する表現がないか確認します。 |
| 比較・優良性 | 「No.1」「最高」「人気No.1」「他院より優れている」などの表現がないか確認します。 |
| 自由診療 | 治療内容、期間・回数、標準的な費用、主なリスク・副作用、問い合わせ先を確認できるか見直します。 |
| 料金 | 最低価格だけを強調していないか、別途費用や適用条件を見落としにくい形で示しているか確認します。 |
| 症例写真 | 写真の近くに必要な説明があり、加工や誤認を招く演出がないか確認します。 |
| 口コミ | 患者の治療体験談や効果に関する感想を転載・編集・強調していないか確認します。 |
| ハッシュタグ・返信 | 投稿と無関係なタグがないか、コメント返信を含めて不適切な誘引がないか確認します。 |
違反を防ぐためのSNS運用フロー
- 投稿の目的を分けます。
休診案内、採用、健康啓発、診療案内、自由診療の紹介などを分類します。 - 自由診療・症例・料金・口コミは重点確認します。
投稿案だけでなく、画像、プロフィール、固定投稿、リンク先とのつながりも確認します。 - 承認者を決めます。
担当者だけで公開せず、院長または医療広告に詳しい責任者が確認する体制を整えます。 - 公開後も見直します。
料金改定、提供メニューの変更、勤務体制の変更があった際は、過去投稿やプロフィールも更新します。 - 判断に迷う表現は所管自治体へ相談します。
医療広告に関する相談先は、医療機関を所管する自治体の窓口です。

まとめ
クリニックのSNSで起こりやすい失敗は、短い投稿だからといって必要な説明を省くこと、口コミや症例写真で効果を強調しすぎること、自由診療を価格だけで訴求することです。
運用の基本は、効果を断定しない、比較して優れていると示さない、自由診療の費用・回数・リスクを分かりやすく示す、体験談を広告に使わないという4点です。投稿前チェックを習慣化し、迷う表現は公開前に専門家や所管自治体へ確認することをおすすめします。

